特殊効果
● 特殊効果とは何か 絵具と筆で描く普通の絵の場合、全ての表現は描き手の手作りです。雪景色を例に取りましょう。雪が降っている様子を描きたいとすると、筆に白い絵具をつけて、点々と画面に、降りしきる雪を描いていく必要があります。 しかし、パソコンで描く場合は、降っている雪の量や激しさ、粒子の大きさを数値で指定すると、クリック一つで画面全体に雪を降らせることが可能です。気に入らなければ、それを消して再度数字を入力してやり直すことが可能です。タブレットやマウスで描くことなく、雪が降りしきる様子が瞬時に表現できるわけです。 このように、人力ではなく描画ソフトの力で表現できる効果を、ここでは特殊効果と総称して解説します。特殊効果という言葉は、皆さんに理解してもらいやすいように私が勝手につけたもので、描画ソフトによって呼び名は様々だと思います。よく使われるのはフィルターという言い方ですが、描画ソフトの中にあらかじめ組み込まれているものについては、単に効果と記されている場合もあります。また、色の調整の項目を操作することによって、特殊効果と同じような効果が得られることもあります。従って、ここで言う特殊効果とは、外延のやや曖昧なフワッとした概念だと思って下さい。いずれにせよ、我々が手描きで描いたものにソフトが特殊な処理を施したり、我々が手描きで描かなくとも、パソコンが一定の表現をしてくれるものだということです。 なお、これらの特殊効果は、描画ソフトに最初から備わっているものもあれば、有償・無償でインターネット上で配布されているものもあります。無償でも充分活用できる優秀なものが少なくないので、あなどってはいけません。 ● どんな効果が得られるのか 効果はそれこそ様々で、星の数ほどあります。私が風景画や静物画を描くのによく使うものを挙げると、 ・単色を分散して沢山の色の粒を作る(スーラの色彩分割みたいになります) ・上記の分散させた色をにじませる(幾つもの色の絵具を薄く塗り重ねて作ったような画面ができます) ・一定方向に画面(レイヤー単位)をゆがませる(縦にゆがませると草の表現に、横にゆがませると波の表現に使えます) ・凹凸を作る(木の肌や葉の表面に使えます) ・ぼかす(遠景のぼけ感や霧の風景に使えます) ・一定の模様をつける(花の絵の背景によく使います) と、この他にも色々ありますが、書き出すときりがありませんので、この辺りでやめます。逆に言うと、それほど私はこの特殊効果を多用しているということになります。 勿論、世にあまたある特殊効果の全てが、風景画や静物画で有用というわけではなく、面白いけれど使えないものも、星の数程あります。 あと、絵を描くのに直接関係ありませんが、パソコン上で描いた絵を、指定した額に入れてくれるという変わった効果もあります。額入りの状態でホームページにパソコン絵画を飾りたい人にはいいかもしれません。額の種類は豊富ですし、本物の額と違って無料ですからね。 ● まずは使ってみること 星の数程ある特殊効果ですが、これは絵具と筆で描く普通の絵の世界ではあり得ないものなので、最初は、どういう効果があるのか、何に使えるのか、よく分からず戸惑われるかもしれません。私も最初はそうでした。 今まで絵具と筆で描いてきた人にとって、この未知の道具は最も扱いづらいシロモノだと思います。ですから、最初から使う必要はありませんし、特殊効果について勉強しようと気負い込む必要もないと思います。ただ、私の経験では、特殊効果を使い始めてから、パソコン絵画における表現が豊かになったように感じます。ちょっと使い始めると、他の効果の活用方法を考えるようになり、手探りながら少しずつ使用範囲が広がっていきます。 で、どうするかですが、まずは試しに、どんな効果があるのか、遊びのつもりで自分の絵に適用してみることだと思います。使えそうなもの、役に立たなそうなものと、様々だと思いますが、最初は使い物にならないと思った効果も、ふとしたきっかけで使い道が見つかり、以後多用するようになるケースがあります。食わず嫌いにならず、幅広く試された方がいいのではないかと思います。とにかく絵具と筆で描く絵にはない新しい世界ですから、先入観に捉われず、それまでの常識を捨てて色々試してみることが、新しい世界を開くきっかけだと思います。 |