特殊なブラシ




● どんなブラシがあるのか

 油絵や水彩画、日本画で使う筆には、実に様々なものがあります。太筆と細筆といった塗面の大きさに違いが出るものだけでなく、丸筆と平筆のような塗面の形状を変えるもの、油絵の豚毛や貂毛(セーブル)のようにタッチや筆触を変えるもの、日本画の隈取筆のように用途が違うもの、などなど。数え上げればキリがありません。

 パソコンで絵を描く場合にも、現実の筆を真似てタッチを変えられる機能が、描画ソフトについています。塗面の大きさ、形状は言うに及ばず、ぼけた感じ、かすれた感じも表現可能です。他に、鉛筆と筆、チョークなどを描き分けられたり、エアブラシが使えたりと、自在に選択できます。


● 普通の筆にはないブラシ

 現実の世界の筆は実に多種多様と冒頭書きましたが、パソコン上のブラシのバリエーションは更にそれを上回り、信じられないような筆が沢山あります。

 一例を挙げれば、筆先がそのまま何かの絵になっているものがあります。これは星型とか五角形といった模様だけでなく、犬や鳥、家や飛行機、車など、現実の筆では作り得ないような形で色が塗れるブラシが用意されています。例えば、色を選択するパレットから青を選び、車のブラシで画面に入力ペンを置くと、青い車が画面に現れます。勿論、車の大きさも指定できます。

 他にも、写真やイラストを筆先に設定したり、既に自分がパソコン画面で描いたもののうち特定範囲を指定すると、それが筆先から現れるといった特殊な機能もありますが、どういうブラシが選択可能かは、描画ソフトの種類によります。勿論高価なソフトには多種多様なブラシが用意されているのでしょうが、私が使っている「PaintShopPro」のような廉価版ソフトでも、充分なバリエーションのブラシが用意されています。


● 実際にはどの程度使えるか

 さて、以上のように様々な特殊ブラシがあるわけですが、風景画や静物画を描くうえで、どの程度役に立つものなのでしょうか。

 筆先が車や猫の形になっているブラシは、イラストやホームページ用素材を作成するときには便利かもしれませんが、実のところ風景画や静物画を描くうえでは無用の長物となります。では、こういう特殊な形状のブラシに使い道がないのかというと、そうでもないのです。

 特殊形状のブラシというのは、ソフトにもよりますが、自分自身で作れます。例えば、自分で鳥を描いて、それをそのままブラシの形状として登録できる機能を持っているソフトがあります(私が使っている「PaintShopPro」でも可能です)。この機能を使うと、自分が絵を描くうえで繰り返し使う描写をそのまま登録してブラシを作れます。

 私自身が作って時々使用しているこの種の特殊ブラシに、草原の葉の形状を登録したものや、森の木々の陰影を登録したものがあります。前者の場合は、一本々々手描きした草の集合を、ブラシの形状画像として登録しています。1つのパターンだけだと単調な繰り返しになるので、幾つかパターンを作っています。この自作ブラシを選択して塗っていくと、画面に草原の模様が現れます。そのままだと味気ないのですが、幾つか重ねたレイヤーの一枚にこれを入れて透明度を調整すると、いい雰囲気を出す下地として使えます。森の形状のブラシも同じことです。



 これはほんの一例ですが、工夫次第で色々な可能性が出て来ると思います。皆さんでも活用方法を考えてみて下さい。


 

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