レイヤー
● レイヤーとは何か パソコンで絵を描くのにどんな描画ソフトを買えばいいかを解説している雑誌の記事やホームページの説明をみていると、「できればレイヤー機能を持つソフトにした方がいい」という説明がなされています。 レイヤーというのは聞き慣れない言葉かもしれませんが、英語で「layer」とつづり、「層」という意味です。具体的には、パソコン画面上に存在する仮想の透明シートだと思って下さい。この透明なシートの上に描画ソフトで線を引き色を塗ると絵が描けます。その意味では、レイヤーはWindows付属の「ペイント」の画面と同じなわけですが、唯一違う点は、1つの絵の中で、この透明シートを何枚も地層のように重ねられるという点です。 例えば、一枚目のレイヤー一面に、青い色を塗り白で雲を描きます。要するに空です。その上にもう一枚レイヤーを重ねて、山を描きます。そしてその上にもう一枚レイヤーを作って草原を描き、更にもう一枚レイヤーを重ねて木を描きます。この4枚のレイヤーを重ね合わせて見ると、白い雲の浮かぶ青い空を背景に、遠景に山が描かれ、手前の草原には木が一本植わっているという風景画が完成します。 ● 何がメリットか 上に書いた風景画と同じ絵は、Windows付属の「ペイント」でも描けます。しかし、この絵を若干手直ししたいと思ったら、レイヤーのあるなしで全然手間が違います。 例えば、上記の風景画で、手前の木の位置をもう少し右にずらしたいとします。「ペイント」だと、まず既に描いてある木を消すため、背景を描き足す形で木を塗りつぶしていき、改めて新しい木を描き加える必要があります。これは、絵具と筆で絵を描いている場合も同じです。要するに、事実上、画面全体にわたって描き直すという手間がかかるわけです。 しかし、レイヤーを重ねて描いた場合だと、これは一瞬で出来ます。4枚目の木が描かれたレイヤーだけを少し右にずらせばいいわけです。絵具と筆で絵を描いてきた人から見れば、画面上に自分が描いたあるパーツだけ移動させるなんていうことは、驚天動地の技だと思いますが、レイヤー機能のあるソフトを使って描けば、いとも簡単にこれが可能になります。 ● パーツを差し替える、後から加える 今度は、木を描くのをやめて小屋を描きたいとしましょう。この場合は、4枚目のレイヤーだけを削除し、新しくレイヤーを作り、小屋だけを描き加えればいいわけです。 加筆も容易で、上記の風景画で、山と草原との間に森を追加したいとしましょう。この場合は、山を描いたレイヤーと草原を描いたレイヤーの間に新規のレイヤーを一枚作り、そこに森を描けばいいのです。 ● 更に複雑な表現へ レイヤーには他にも沢山のことが出来ます。例えば、既に何かの絵が描いてあるレイヤーをコピーして、もう一枚同じレイヤーを作れますし、あるレイヤーだけ透明度を変えたり、色相を変更したり出来ます。 こうした機能を使うと、例えば森はこんなふうに描けます。まずレイヤーの上に、森の形に単色で色を塗ります。そしてこのレイヤーを何枚かコピーします。そのうち、あるレイヤーについては色をにじませて森の木々の表現を組み込み、またあるレイヤーについては木々の陰影を描き込み、他のレイヤーには光の当たり方によって出来るグラデーションを描きます。こうした何枚かのレイヤーを透明度を加減しながら重ね合わせて見ると、森の複雑な表現が比較的容易に出来ます。ちなみに、私は森を描く場合、たいていこうした手順で制作しています。 こんなふうにレイヤーは、油絵や水彩画では考えられないような特殊な作業を可能にする道具です。最初は慣れないかもしれませんが、一度使い出すと、これなしには絵が描けなくなるほど便利な道具だと思います。 ● レイヤーを使う際の注意 レイヤーは上に書いたように大変便利な道具ですが、沢山レイヤーを作るとそれだけパソコンのメモリーを食い、一定限度を超えると描画ソフトの動作が遅くなります。ですから何でもかんでもレイヤーを分けた方がいいというわけではありません。先々の手順を考えながら、必要なだけレイヤーを作るようにした方が、作業が軽快に進みます。 もしレイヤーを作り過ぎてソフトの動作が緩慢になったら、特定のレイヤー同士を結合することが可能です。もうこれ以上手を加えないと確実に言えるレイヤーが複数あるのであれば、レイヤーの上下関係に気を付けながら、結合できるものは結合してしまえばいいわけです。 ただ、複雑な絵を描くに当たり、どうしても沢山のレイヤーを使いたいなら、メモリーを増設するという方法もあります。私は1つの絵を描くに当たり、最低20〜30枚はレイヤーを作っていますが、それでもソフトの動作が遅くならないのはメモリーを1GB積んでいるからです。メーカー製パソコンをご使用の方だと、1GBのメモリーを積んでいるモデルは少ないと思います。そんなときは、メモリーの増設を考えてみるのも一案かもしれません。 |