タブレット



 私が個人的に頂く問い合わせの中で最も多いのがタブレットに関するものです。タブレットについては、「パソコン絵画のすすめ」本編でも解説してありますし、「パソコン絵画徒然草」でも触れたことがありますので、今更多くを付け加えるつもりはありませんが、何度か繰り返し述べたことを、改めてここでまとめて書いておきたいと思います。


● タブレットは必須か

 「パソコンで絵を描くのにタブレットを買わないといけませんか」という問い合わせをよく頂きます。勿論なくてもいいですが、ある方が圧倒的に楽ですよというのが私のいつもの回答です。

 世の中にはマウスだけでかなり達者な絵を描かれる方も多数いらっしゃいますし、普及版でも1万円程度はするものなので、なしで済ませたいということであれば、それはそれでかまわないと思います。ただ、あればあったで大変便利な道具なので、それがどう便利かを、マウスで描く場合と比較して以下に記しておきます。


● 何が便利か(その1)−微妙な描き込みに有利

 まずタブレットがあると大変便利なのは、鉛筆や筆を持つのと同じように絵を描いていけるということです。ほぼそれに尽きるといってもいいくらいで、特に細かい部分を描き込んだり、緻密な線を引きたい場合には、タブレットとマウスでは手間が全然違います。


● 何が便利か(その2)−肩が凝りにくい

 もう1つ、私にはあまり関係ないのですが、肩が凝りにくいというメリットもあります。
 マウスで描く場合、線を引き始める始点にポインタを置いて、そこから左クリックしたままドラッグで線を引きます。このように右手人差し指に力を入れたまま右手に微妙な動きを強いると、筋肉が緊張した状態が長く続き肩が凝ります。
 他方、タブレットは、絵を描くために作られた道具ですから、指でボタンを押さえたりしなくとも、単に始点から終点までペンを走らせれば線が引けます。力を抜いた状態で扱えるため、肩が凝る度合いはマウスよりかなり低いと思います。


● 何が便利か(その3)−筆圧感知

 タブレットには、筆圧を感知する機能があります。この機能をソフトと連携させると、強く描くと描線が太くなり、筆圧を弱めると描線が細くなるほか、筆圧によって色が変化するような設定にも出来ます。例えば、筆圧によって描線の太さを変化させる設定にすると、筆と絵具で描くのと同じように、草の先端が細くなっていく描写を一筆で表現できるようになります。

 なお、この機能を使った特殊な効果を得るためには、絵を描くのに使うソフトウェアが筆圧感知に対応している必要がありますが、高価なソフトでなくても対応しているものはあります(私が使っている「PaintShopPro」も対応しています)。

 マウスと比較したときのタブレットの便利さは、以上のような次第ですが、ではタブレットは絵筆と全く同じかといえばそうではありません。私の経験をもとに、何がどう違うのか簡単に記しておきます。


● 絵筆との違い(その1)−手元の感覚の違和感

 鉛筆で紙に絵を描くような感覚でタブレットを使うと、誰しも最初は違和感を覚えます。普通、鉛筆で紙に絵を描くときは、目は手元にある鉛筆の先を見ていて、引かれていく線を目で追いながら、手を動かしていきます。しかし、タブレットの場合は、目はパソコン画面を見ながら、手は入力ペンを握ってタブレットの上を動きます。入力ペンの先から線が引かれていくのが見えるわけではないので、何か遠隔操作をしているような不思議な感覚を覚えるはずです。この感覚はどこかもどかしさがあり、最初は引く線がぎこちなくなると思います。

 こうした違和感は、誰しも最初感じることで、描いているうちに慣れて来て、そのうち自由に線が引けるようになります。要するに、時間が解決してくれるということです。そうは言っても、想像していたのと違う感覚に、初めは果たして大丈夫だろうかと不安になるものです。そして、その時期が、パソコンで絵を描こうとする者が必ずくぐりなければならない最初にして最大の試練だと、私は思っています。そこで、やっぱりこれは私向きではないと諦めると、道は閉ざされます。実際のところ、誰だって練習すれば上手に自転車に乗れるように、タブレットだって慣れの問題に過ぎないのです。タブレットを使うのに、才能や向き・不向きは関係ありません。

 しかし、よく考えてみると、マウスだって目で画面を追いつつ手はマウスを動かしているのですから、感覚は同じはずなのですが、私の経験では、タブレットの方が違和感があったように思います。これは、「タブレットは鉛筆で絵を描くのと同じ」という思い込みがあるからではないかと私は推測しています。


● 絵筆との違い(その2)−描き味の違い

 絵筆の先端は毛ですから、かなり硬い素材の筆でも描くとそれなりにしなります。その柔らかいタッチに慣れた人には、タブレットの感覚は、まるでガラスの上でボールペンを走らせるような未知の感覚だと思います。紙にボールペンではなく、ガラスにボールペンです。まず硬い。これがタブレットの感覚です。

 もう一つはよく滑るということです。氷の上という程ではないのですが、絵筆よりもツルツルした感じを受けるでしょう。ただ、滑って勝手に筆が走り困るということはありません。


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 以上、長々と描いてきましたが、百聞は一見に如かずです。大手の家電量販店のパソコン売場では、実際にタブレットを展示して試し描きさせてくれるところがあります。もし購入を考えておられるようなら、一度手に取って使ってみられたらどうでしょうか。


 

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